東西だけじゃない! 90sサザンヒップホップの世界

Murade

ヒップホップと言えば、歴史を辿ると70年代のニューヨークで発祥し、80年代後半にアメリカ東海岸で黄金期を迎えたカルチャーであり、音楽ジャンルの一種である。
90年代になり、ロサンゼルスでICE T、N.W.Aなどのギャングスタラップが勃興し、Dr.Dreのクロニックでギャングスタラップの雰囲気を持ちながらも、西海岸のイージーなフィーリングをブレンドした事で一般層のリスナーまで浸透、ポップカルチャーとしてウエストコースト・ヒップホップは全国的な指名権を得る。その後オリジナルの東海岸ラッパーと、後続の西海岸ラッパーとで、かの有名なヒップホップ東西抗争が起きた事はそれなりに有名であるが、実はその裏で90年代には第3のヒップホップ都市が存在する。
それはヒューストンやアトランタなどのアメリカ南部の都市である。
今回はこれらの90sサザンヒップホップについて紹介したいと思う。

サザンヒップホップとは?
アメリカ南部の都市出身のラッパー達をここではサザンヒップホップとして総称して呼ぶ事にする。彼らの特徴としては、東海岸/西海岸のヒップホップと比べると、非常にいなたいサウンドが特徴だと思う。
全体的にテンポが遅めで、洗練されすぎない煙たい雰囲気をムンムン漂わせていて、噛めば噛むほど味わい深いナイスガイズなのである。
そんなサザンヒップホップの中から、個人的に重要だと思う4組のグループを紹介したい。

Geto Boys

1986年にヒューストンで結成されたグループ。その後メンバーが色々と変わり、90年代初めのブッシュウィック・ビル、スカーフェイス、ウィリー・Dの3人のラインナップが多分1番有名。
メンバーの中でも、元ドラッグディーラーならではのハードコアなストリート生活のバックグラウンドがあり、巧みなストーリーテリングを交えたリリックを太いやさぐれた声でラップするスカーフェイス は南部の伝説的なラッパーの1人として認知されている。
小人症で背の小さいブッシュウィック・ビルも、サイコな世界観のリリックや、当時の彼女に片目を銃撃されて失明したりと、センセーショナルな話題でグループを有名にするのにひと役買っていたりもする。
※彼が銃撃され、病院に搬送されている時の写真が、3枚目のアルバム”We Can’t Be Stopped”のジャケットに採用されていたりする。

そんな彼らの代表曲である”Mind Playing Tricks on Me”がこれ。

煙たいイカしたサンプリングビートに、危なげな精神世界のリリック、3人の泥くさいラップが乗ってめっちゃ濃厚な楽曲。聴けば聴くほど好きになる。

MTVのライブ映像もあるんだけど、田舎者っぽい中にギラギラと光るものがあって良い。あと、ブッシュウィック・ビルの見た目が最高。

意外にもこういうバラード調のグッドソングもあったりとで、一筋縄じゃいかないグループだよね。


UGK

テキサス州ポートアーサーで1992年ごろにデビューした、バンBとピンプC(名前が最高)の2人によるラップデュオ。
基本テンポ遅めな楽曲と、気怠そうにレイドバックしたラップをするバンBと、若干甲高い声でストイックにラップするピンプCのバランスが絶妙。
ピンプCの常にメガネなルックスがイケてて大好き。
残念ながらピンプCが2007年に亡くなってしまったため、現在は活動していない。

彼らの曲を数曲紹介。
サンプリングがめちゃくちゃ最高。絡みつくようなラップがやみつきになる。

こちらもサンプリングが最高なのは言うまでもないのだが、こういう洗練されすぎない土着な田舎っぽいサウンドでチルい楽曲が多くてUGKは最高。
ちなみにUGKは、Underground Kingzの略らしい。ダサくていいね。

Outkast

アトランタ出身であるアンドレ3000とビッグボーイの2人からなるデュオ。
今回紹介する中では、1番一般的な知名度あるような気がする。
オーバーグラウンドでも大ヒット飛ばしまくりでグラミーも獲り、ここ近年はそれぞれソロで活動している彼らなのだが、初期のダーティーなザ・90sサウスな頃の彼らの楽曲を紹介したい。

とにかくラップが2人とも上手すぎる。
緩急自在なフロウは聴いててとても気持ち良い。それにしてもこの時なんとまだ10代で若い・・・

これは彼らの有名なスピーチ。
1995年のSource Awardsで東西抗争真っ只中で会場がピリピリしている中、Best New Artistで誰も気に留めてなかった南部出身のOutkastの名前が呼ばれ、アンドレ3000が「サウスには言いたいことがあるからよく聞いとけよ」とスピーチし、サウスヒップホップ勃興の象徴的な出来事になった。

この後彼らのクリエイティビティは天井を知ること無く進化し続け、オーバーグラウンドでもヒットを飛ばしまくり、サウスヒップホップの文脈では語りきれない程ビッグな存在になった。完全ブレイクした以降だとこの曲が個人的にけっこう好きだったりする。

Three Six Mafia

メンフィス出身のヒップホップクルー。
メンフィスのミュージシャンといえばエルヴィスぐらいだと思ってる?Three Six Mafiaがいるでしょ。
個人的には今回紹介したアーティストの中で1番好きなグループ。
ヒップホップクルーと言いつつ、ジューシーJとDJポールが中心メンバーで、後のメンバーは取っ替え引っ替えな感じである。

1995年の1stアルバム”Mystic Stylez”はトラックの大半がホラー映画のサンプリングや怪しいシンセの音をおり混ぜ、俗にホラーコアという暗くて奇妙な曲ばかりのアルバムとなっている。全編に漂うB級感がもう最高。最近のヒップホップアーティストの中で流行っている”トラップビート”の実は始祖的な人たちだったりするので、現代ヒップホップの文脈においてはより重要なアーティストになっているのかもしれない。

ホラーコアの1st以降は、段々とクラブ寄りというか、オーバーグラウンド思考な曲も徐々に増えてくるんだけど、この曲はタイトルが”Tear da club up”=”クラブを引き裂け”でマジで最高。当時クラブでこの曲がかかると、クラブがマジにボッコボコになったらしい

この曲は当時オーバーグラウンドでもヒットした一曲。
絶妙なダサさと若干怪しげなトラックが最高なパーティーチューン。うーんやっぱマフィアいいね。

この曲が収録されてるアルバムのタイトルが”Most Known Unknown”=”最も知られている知られてない奴ら”っていうのがマフィアらしい。

現在は中心メンバーの2人が仲悪い?みたいで一緒に活動していないよう。
ジューシーJは近年でもベテランや若手ポップスターとフィーチャリングという形で色んなアーティストとコラボしたり精力的に活動してる。

如何だっただろうか。都会的な洗練さは無く、無骨な感じで田舎くさく、どことなくゆったりとした気持ちにもさせてくれる、そんなサザンヒップホップ。
現在においてもサザンからは最高なラッパーがどんどん登場してきてたりするので、是非聴いて楽しんでもらいたい。

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